鴨川もるもー

日々の日記、雑記ブログ

限りなく透明に近いブルー 著:村上龍


この小説は、始めから終わりまでパイナップルの酸っぱい匂いが染み付いて取れません。
パイナップルに始まり、パイナップルに終わる。焦点はちょいとズレてるようですが、ほぼ事実です。

または、ジャンキーな若者達が集団でラリって、ドアーズのレコードとかで飛び跳ねる小説です。

こんな風に紹介すると下らない小説に思えますが、何だか刺さるんですよね。何でだろうか。
意味不明な所と、若者達が心情を吐露してる所と、ガラス色を遠回しにカッコ良い言い回しにしている所と。数え上げればキリがありません。

まぁページ数も薄い本ですが、登場人物も多く、内容が内容だけに、私のような頭では少し理解に時間がかかります。その分、この薄さは何度も読み返せるボリュームになっているんですね。

誰かが死んだり、物を失ったり、他人同士がケンカしたり、思い出話聞いたり、そんな話が繊細な文章で淡々と続いて、ぐちゃぐちゃぐちゃーってなって、そのカオスな感じが、何だか惹かれるんですね。うまく説明できないですけど。

うまく説明できないからこそ、惹かれるのであって、うまく簡潔に関係性とかを説明できるようなら、きっとその小説には惹かれないんじゃないかなとも思います。

また、主人公のリュウが話す言葉にはには感情の起伏がなくて、淡々と話す様子が、雨の雫が乾いた砂地に静かに染み入るように、胸に心地良く響きます。

ほぼ内容が無い、直接文脈に関係ないような、登場人物が話す数行のエピソードが、すごく物悲しく、余韻に満ちています。

大して本棚のスペースも取らないですから、ずっと我が家の本棚の定位置をキープし続けることでしょう。