鴨川もるもー

日々の日記、雑記ブログ

ロバのおじさん ちんからりん

昔、家の前をロバのパン屋なる移動販売車が通っていた。今思うと、あんな狭い路地でしかも直角の曲がり角と急な坂道を通るなんて信じられない。対向車が来たらどうしていたのだろうか?車はどんな形だったか覚えていないが、とにかくいつも家の近くに来ると歌が聞こえてきた。

”ロバのおじさんちんからりん ちんからりんでやってくる”

あの歌が聞こえると、もう今はいないけど、死んだばぁちゃんがアニキと自分を外に連れて行ってくれて、好きなパンを選ばせて買ってくれた。
記憶が定かではないが、何か蒸しパンだったかクリームパンだったかを買って貰っていたような。商店街のパン屋のパンと記憶がごっちゃになって、どんな形だったか良く覚えていない。子供の両手に余る程の大きさだったような気がする。
アニキも家にいたはずなので、日曜日の朝に来ていたのかなぁ。あの歌だけはメロディーと共に、頭の片隅に焼き付けられた。


時は変わって、場所も変わり、自分は仕事の都合で当時とは別の土地で生活していた。
ある時、忘れかけていたあのメロディーが。

”ロバのおじさんちんからりん…”

思わず走って外まで追いかけた。おじさん待って!パンをくれ!
少しおじさんと話をした。昔は、移動販売車のパンがご馳走であり、おやつであり、とにかく皆喜んで買ってくれた。今は食べ物がどこにも溢れ、豊かになって、昔程貧しく無い。時代が変わったんだと。
それはそれでいいのだが、食べ物のありがたみが薄れて、少し寂しいとも思う。

いつかロバのパン屋みたいな、人が喜ぶようなことができたらいいなぁと思ってる。