鴨川もるもー

日々の日記、雑記ブログ

坑夫 夏目漱石

青年が穴に入ってウジウジして、親切にされる話。

夏目漱石の文章は読んでいて落ち着く。
自分ではよく分らないが、風景や内面の丁寧な描写がそうさせるのだろうか。はたまた知らない漢字や言葉、言い回しに出会い、高尚な気分にでもなるのだろうか。出鱈目な当て字が心静かにさせるのだろうか。
いずれにせよ、読んでいると、漱石自身に対しても好感が持ててしまうから不思議だ。

漱石は人の心を動かすのが上手い。乱雑な状況下で、突然人の親切に出会わせる。それも単なる親切では無い。本当に相手の事を想った親切だ。この対比にいつもやられる。
自分も社会から逃避した際、こんな親切に出会うだろうか。こんな丁寧な言葉遣いに出会うだろうか。辛い時程、他人からの親切に染み渡る。

村上春樹 海辺のカフカの田村カフカ君は甲村記念図書館で、どんな心境でこの小説を読んだのだろうか。

それにしても、せっかく登場させたキャラ立ち赤毛布と小僧の目立った活躍も無いまま、通行人のようにフェードアウトさせるなんて。勿体ない。
今なら赤毛布と小僧のスピンオフ作品で一つの外伝が出来上がってしまう。白飯三杯はいける。興味あるなぁ。赤毛布と小僧の生い立ち。

100年前の小説が未だに読み継がれているのは、非常に稀有なことだ。何でも100年経つと大概のものは忘れ去られてしまうらしい。
語り継がれるものはごく一部。きっと価値のあるものだけだろう。
死んでからも作品が読み継がれていくなんて、漱石自身はどんな気分だろうか。一度本人と話がしてみたい。